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『マンガ論争7』書評_トレパクに関する記事について


マンガ論争7マンガ論争7
(2012/08/10)
永山薫、昼間たかし 他

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永山薫氏が夏コミ前にTwitterで「トレパクに関する内容の記事を書く」とツイートしていたので、参考のために「マンガ論争7(以下「7巻」と記述)」を購入した。
マンガ論争は初回の「マンガ論争2007-2008(以下「1巻」と記述)」以来となる。以前も竹熊健太郎氏の「パクリ」に関する記事などを目当てに購入した。1巻は今も手元にある。

2007-2008 マンガ論争勃発2007-2008 マンガ論争勃発
(2007/12/21)
永山 薫、昼間 たかし 他

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1巻も第三章から「同人誌問題」を筆頭に「パクリ」に関する記事が載せられている。その中でも永山氏は検証サイトについて記述しており、トレパク問題は「権利者同士の問題」と論じている。そして必要以上に第三者が関わり、パクリ作家を糾弾することも避けるべきだとしている。ただし、その論旨であっても、トレパク検証サイトの存在価値を認めていないわけではない。「検証サイトを見て事例がわかりやすくまとめられていることは、次にそれを見る人が事例を把握しやすくなる」という側面から、その価値を認めている。

7巻になってもこの姿勢は崩しておらず、やや踏み込んだ認識やマサオ氏や東山翔氏などタイムリーな事例を紹介してはいるが論旨自体は1巻の頃から変わっていない。やはり第三者が必要以上に関わることはせずに、当事者間の問題だとする論旨である。そして同様に検証サイトの価値も否定的には捉えていない。言論の自由として「公正に」あるべきだとしている。

この「公正」のために、検証サイトへの指摘として「引用の項目を正しく守っているか」について多めに記事が書かれている。出典の明記(氏名表示権の破棄)や、検証のための改変(同一性保持権の侵害)について具体的な指摘が述べられている。



ネット上では検証のための改変について「脱ゴーマニズム宣言(以下「脱ゴー」と記述)」の事例がよく引き合いに出され、コミックの引用を扱った判例として参考にされる。「脱ゴー」の判例の中で、批評のために用いられたコマの切り出し画像が「公正な利用に基づく引用」として、適法(合法)であると判決が下されている。この面から報道・批評のための引用として、検証画像も公正利用に当たるのではないかと推測されている。

脱ゴーマニズム宣言―小林よしのりの「慰安婦」問題脱ゴーマニズム宣言―小林よしのりの「慰安婦」問題
(2002/06)
上杉 聡

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しかし脱ゴーの中でも、批評のためにページの中で「コマ」のレイアウトを組み替えた画像があり、これについては著作物の改変に当たるとして「同一性保持権の侵害」が認められている(後述)。
7巻の中でもトレパク検証サイトで検証のために画像を引用することは公正な利用とされるかもしれないが、そのための「改変」は著作人格権(同一性保持権)の侵害となる可能性あると指摘されている。

7巻の中で「第二十条…やむを得ないと認められる改変」について語られている。この「やむを得ない改変」も脱ゴーの判例に出てくる条文である。

この条文が用いられたのは、原告・小林よしのり氏の描いた人物の似顔絵に対し、被告・上杉聡氏の批評本では似顔絵に目隠しが付けられ、「似顔絵」としての同一性を欠いているという訴えについてである。この訴えに対して被告側は「似顔絵は実在人物と判るように描かれたものであり、引用掲載にあたり肖像権などの問題を避けるために付けた目隠しである」と主張して、その改変(目隠し)が一審判決で「やむを得ない範囲の改変である」認められている。



詳しい内容は以下の書籍、104項〜を参照。より正確に明瞭にまとめられている。読み物としても読みやすいので、興味のある方には購読をお奨めする。

著作権の事件簿―最新判例62を読む著作権の事件簿―最新判例62を読む
(2007/12)
岡 邦俊

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上記、書籍の中で著者は詳しく判例を読み解いた上で、同一性保持権の侵害が認められたコマ割の改変については「大局観が欠落した判決である」として判決に対し批判的である。

・原告の訴えた要部*から離れている(コマの改変で要部は左右されない)
・同一性を損なうほどの改変とは判断できない(控訴審以前の一審では改変が認められていない)
・このような判決により出版の差し止めが実地されたことは言論の自由を封じている(と懸念)
*:要部は「違法引用による”複製権の侵害”」であり、「コマの改変による”同一性保持権の侵害”」は要部ではなかったと論じている。

著者は、上記のコマの改変よりも、似顔絵の目隠しについて言及すべきであったとしている。似顔絵の目隠しについて被告・上杉聡側は、実在人物の「肖像権」などを根拠に目隠しの必要性を唱えているが、小林よしのり氏の著書では似顔絵や実名を出して本人と判るように批判が成されており、それを目隠しにより欠く被告・上杉聡氏の批評本は、原告・小林よしのり氏の著作にある思想・表現を損なっている、とする初期の主張の方が正当性があると論じている。

もちろん、この主張は一審でも原告・小林よしのり側から訴えられている。しかし、「違法引用(複製権の侵害)・似顔絵の目隠し・コマの改変(同一性保持権の侵害)」いずれも一審では認められず、控訴審では「コマの改変」についてのみ「被告がレイアウトの工夫なく、原告の著作物を改変したことはフェア(公平)とはいえない」として訴えの内容が認められ、その範囲により出版の差し止めが出されている。(2002年に脱ゴーは問題個所を修正し再販)

著書内で、そもそも原告・小林よしのり側は、被告・上杉聡側の著名性への「ただ乗り行為」を差し止めるのが目的であったと解釈している。(「ゴーマニズム宣言(著:小林よしのり)」という作品の著名性に、ただ乗りしたとされる「脱ゴーマニズム宣言(著:上杉聡)」)。
そのために「出版差し止め」という目的が達せられた時点で、似顔絵の目隠しについては言及がなされず同一性保持権の侵害行為が「やむを得ない改変」と認められる判決が残ってしまったのは、ある意味で残念だとしている。(後の上杉側からの上告が棄却され判決が確定した)



上記を読み解くと「やむを得ない改変」について、脱ゴーの判決を論拠とするには判例(内容)に疑問が残る。

しかし、いずれにしろ批評のため著作物に改変を加えることは、立場的に足下を脆くする行為であると判断せざるを得ない。検証画像から相手にツッコミどころを与えていることになる。この点は「マンガ論争」1巻、7巻内でも同様に語られている。
7巻では「検証する側もフェアに、慎重にやってほしい」という論旨が展開されているように感じた。

後記に漫画業界で問題となった著作権問題が列挙されている。概要のみであるが、事例の手引きとしては参考になる部分が多い。

「マンガ論争7」について、今回はトレパク問題に関する記事のみを取り上げたが、他にもP2Pや表現規制についての記事もある。その点についてはここでは省かせてもらう。興味がある方は購読を。
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