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「バイラル・メディア」がもたらすものは何か

米国で急成長の「バイラルメディア」ってどんなもの?
日本のバイラルメディアはまだ未成熟な段階

まだ聞き慣れない「バイラル・メディア」というものについて上記の記事を読むと、バイラル・メディアはその記事の内容などよりも、インターネット上での「拡散性」が注目されていることが判る。現代のニュースにおいて独自性を求めるのは難しい。メディアの間でも情報は一瞬で拡散され共有される。おそらくそこで考えられたのが「扱っている情報が同じならば、サービス自体の拡散性をより高めていこう」というバイラルメディアの形式ではないか。

報道について学ぶ際に、必ずと言っていいほど教えられるのが、「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛むとニュースになる」というジョークである。これは人々が興味を持つニュースの本質をうまく捉えている。新聞王ウィリアム・ハーストは「カメラマンは写真を撮れ!、戦争は私が起こす」と言って、撮られた写真と事実を歪曲して掲載したとされている。これを受けて1898年、スペインとアメリカとの間で戦争が引き起こされたのもハーストの捏造記事が元ではないかと言われている。

ハーストがやったことは「真実」を伝えることではなく、民衆が望む「事実」を(作り上げて)提供することだった。これによりハーストは民衆の心を掴み、新聞王としてアメリカ史に君臨する。しかし、その後はこういったやり方が仇となり失脚している。ただし、ハーストのやったことは一次的であれ結果だけ見れば大成功したと言って差しつかえないだろう。少なくとも人は「真実」よりも「自分たちが望む事実」を期待するのだ。



バイラルメディアは「拡散性を高める」という点において、このハーストのやり方を踏襲したと言っていいだろう。内容を偏向し、タイトルを煽り、ときには事実さえも曲げてみせる。しかし、例えそれが捏造だろうと、特定の記事を望む人間がいる限り、そのメディアは支持される。人は自分が望む方向に情報を集める傾向があるのだ。(これを確証バイアスという)。大衆にとっては真実よりも、自分に都合の良い事実の方が重要なのである。

2014年時点で日本でバイラルメディアと呼べるものは、記事の歪曲のみならず、コンテンツの盗用も蔓延している。これはバイラルメディアの初期状態だと冒頭の記事でも指摘されているが、ここから資金を得て公正なメディアに成長していくにしても、情報の精査が行われるのか懸念は残る。

すでに日本では「まとめサイト」と呼ばれるものが、新しいメディアの形態として成長し注目されている。その多くは掲示板「2ちゃんねる」のスレッドや、「ヤフーニュース」などを転載したものだ。つまり、自分たちで取材した内容を掲載しているわけではない。日本で新興するネットメディアの危うさはここにある。

上述してきたように、バイラルメディアの初期状態には偏向・捏造・盗用は当然あるにしても、それとは別に「情報源が定かではない」という問題を目にすることが多い。このことは「ソースロンダリング(情報洗浄)」としてもたびたび問題視されているが、これもやはり「人々が望むニュース」を生み出すために便利な手法として利用される。


エボラちゃんはどこからきたのか?

2014年、スイスの新聞に「エボラちゃん」というキャラクターが掲載されたことが話題となった。

この新聞記事の元となったのは「ワシントンポスト」などのネットメディアだと言われているが、ワシントンポストはネット掲示板「4ch」から見つけてきたと書いている。これらの画像はコラージュされ差別的な表現が問題にもなっている。
(参照: http://www.vocativ.com/world/nigeria-world/ebola-4chan-anime/

しかし、これらは(デザインは4ch発祥という説もあるが)実際には日本のイラストサービス「pixiv」に投稿された画像であり、作者は4chなどで公開されたコラージュとは無関係だと思われる。

だが、こういった「拡散力」がバイラルメディアの求めるところであり、この件でいえば「エボラちゃんの出典はどこか」という事実は”どうでもいい”のである。それよりも、差別的な表現があったことや、コラージュされたことや、残虐な印象など、衝撃的な部分がバイラルメディアには求められるのである。

海外で新聞やニュースメディアを通して報じられたことで、この作者に何らかの被害や風評が及ぶ可能性は否定できない。結局のところ、この画像の作者自身がコラージュなどにより、問題のある表現をしたのかは不明だが、もしそうでないのなら、これらの報道によって非難を受けることになったとして、そのすべての責任を負う必要が作者個人にあるだろうか?

確かに世界を脅かせているウィルスを擬人化したことは不謹慎であったかもしれないが、それでも「ウィルスを擬人化した」以上のことは作者はやっていない。コラージュしたり、侮蔑的な表現を含めたりもしていない。それをやったのは(おそらく)他の誰かだろう。根源となったイラストがなければ、そもそも問題は起きなかったかもしれないが、ここまでコントロール不能な情報の広がりを作者一人の責任にするとしたら、それは酷なように思える。

ともかく、ネットでは真実よりも、「煽動的な情報」の方が拡散力が大きい。それは人々の怒りや義憤といった感情に強く訴えるものであることが挙げられる。エボラちゃんに関していえば、悪質なコラージュがアフリカの人々の反感をかったとされており、そういったところが見る人間の感情を爆発させ、記事を拡散させるきっかけになったものと考えられる。


黒瀬陽平は自衛隊を「殺人兵器」と呼んだのか?

2014年、若手の評論家として活動している黒瀬氏が「自衛隊は殺人兵器」と評したとして話題になった事例があった。このことが大手「まとめサイト」にも取りあげられて広く拡散されることとなった。話題の元となった記事は以下のものである。

”(前略)アニメ評論家の黒瀬陽平氏は、「若い女性はアニメの影響を受けているだけで、自衛隊の『殺人兵器』という本質を理解していない」と述べ、若い女性に本質から自衛隊を理解し、盲目的に崇拝したり、不必要な感情を抱かないように注意を呼びかけた。”
(引用: 日本の若い女性、アニメの影響を受けて自衛隊を崇拝


これだけ読むとなかなか衝撃的な内容となっており、アニメファンなどからすると反発を招きやすい主旨である。無論、自衛隊に対しても否定的と取られかねないものであるし、女性に対しても差別的な感覚を持つ発言である。この記事もバイラルメディアが望むような感情に訴える「拡散力」がある。まとめサイト(はちま、やらおん)が記事にしたのもそこが狙い目だろう。

しかし、やはり情報の精査が甘かったのか、実際には黒瀬氏が上述のような発言をした事実はないことが明らかになった。元の記事は以下の週刊朝日に掲載されたものであり、インタビューの内容も異なっていた。(朝日は長年に渡る捏造記事などが話題となっていることもあって信頼性には欠けるが、インタビュー内容に関しては黒瀬氏本人から「(朝日から)そういう内容のインタビューを受けた」という言質が取れている)
(参照: 富士総合火力演習に急増中 自衛隊萌え女子の本音を直撃!

実際に上記の記事の中で黒瀬氏は、自衛隊やアニメや女性を批判するようなことは答えておらず、むしろ行き過ぎた考えを持たないように警句さえしている。黒瀬氏のあとに、別の雑誌編集長が「自衛隊は武力的側面ももっていることを忘れないように自戒していかなければならない」という旨の発言をしている。

問題となった記事は、中国系のコンテンツで、転載された黒瀬氏の発言もおそらく翻訳サービスか何かを通して意訳されたものと考えられる。そのため発言の内容も、発言者も混然となり、偏向的な内容となったのだろう。日本のまとめサイトはこの事実を確認せずに記事を拡散させている。(後に指摘を受けて修正)。


日本ではバイラルメディアと呼ばれているものは、スピードや拡散力を重視するあまり、記事の精査などを行わない傾向にある。とくにバイラルメディアの走りともいえる「まとめサイト」は事実関係よりも拡散力を重視することで、結果として偏向や捏造や盗用を生んでしまうことが多い。今回、紹介したのもその一部だといえる。

特にエボラちゃんの事例に関しては、国内のみならず、海外にも情報が及んでいることから、インターネットでの情報の拡散に歯止めが効かないことを示している。黒瀬氏の件に関しても、(ソースや盗用を誤摩化しやすいために)「翻訳」をして海外の記事を盗用することが国内外を問わず増加しており、それによる誤解の発生・情報精査の困難さが問題となってきている。

こういった事例から、日本でのバイラルメディアの利用はまだまだ用心が必要だと理解できる。一見するとすぐに拡散したくなりそうな面白ニュースや、危険なニュースでも、まずは情報源(ソース)を確認することが重要となる。逆に言えば、扇動的な記事で、ソースのハッキリしないものは警戒に値するものだという認識が必要となる。


これからバイラルメディアが怖くなる理由

もうひとつバイラルメディアについて予測を述べておくと、日本の「まとめサイト」は、これまで一見しただけで「まとめサイト」とわかるようになっていることが多かった。アニメのキャラクターを使ったイラストなどがバナーになっており、少し幼稚な印象も受けるサイトデザインは明らかに公正なニュースサイトとは一線を画して、「娯楽」向けのサイトだという雰囲気が伺えた。

見出しも殊更に扇動的で「xxxがすごいことにwwwwww」といった特徴が見られ、こういった点からすぐに「まとめサイト」だと判断できる要素があり、それは公正なニュースサイトと差別化が図られていた。しかし、現在振興しているバイラルメディアの多くは、内容こそ「まとめサイト級」であるにも関わらず、見た目は「公正なニュースサイトのように」デザインされている。これにより大人でも「ちゃんとしたニュースなのだ」と誤解してしまうことが増えるだろうと予測される。

そうしてソースが曖昧な記事が別の記事の根拠にされたり、捏造された事実が本当のことであるように喧伝されてしまう状態は悪循環を生み出す。前述したように人は自分が望む情報を求める傾向にある。自分の偏ったものの見方が偏向や捏造された記事によって、あらぬ方向へ強化されてしまったとしたら、そしてメディアもそこに需要を見出して次々と(ユーザーの望む)虚構を演出していったとしたら…。

人は自ら情報を精査し、思考する能力を持っている。しかし、それは多くの異なった情報が与えられてこそ可能となるものである。メディアが一つの情報しか流さなくなれば、民衆は簡単に一つの意見に集約される。テレビを見ている人が「テレビの良いところは見たくないものも流れてくることだ」と言っていた。これはインターネットなどで「自分が見たい情報」にばかりアクセスしてしてしまう危険性を説いた警句になっている。

インターネットは自発的にものを調べて、自分の知りたい情報にアクセスすることができる。アクティブなメディアである。しかし、その反面、自分の見たいものしか見なくなりがちでもある。A,Bがあった場合に、Aを悪くしたいのであれば、Aが悪い(Bが良い)という情報ばかりを集めてしまいがちになる。現行のまとめサイトでもそういった傾向は観察することができる。前述した確証バイアスも同様だ。

これからバイラルメディアが公正なサイトを装って、閲覧数稼ぎのために偏向された記事を出し、ユーザーがそれを信じてしまうことは十分に懸念される。あるいは盗用された不正規なコンテンツを流通させることに無意識に協力してしまったりもするだろう。自分の欲望に従うだけでは良いコンテンツを見つけることは難しくなっている。WEBサービスも収入のためならば何でもやる時代になっているのである。ニュースサイトだからと簡単に信用はできない。
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