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【漫画】『ハイスコアガール』の著作権侵害を検証する

本稿では、株式会社スクウェア・エニックス 増刊ヤング・ガンガン、及び月刊ビッグガンガンで連載されいてた漫画『ハイスコアガール(以下、HGと記述)』著:押切蓮介の著作権侵害を巡る問題について記述する。本稿では著作権の知識に関してある程度、知識のある層を対象にした記事構成となっているため、著作権法の基礎知識などについては説明をしていない。理解不足な箇所については各自で調べてもらいたい。なお、筆者は法曹の専門家ではなく、公判も判決が出ていないため、内容はあくまで筆者の推測するところであり、議論の余地があるものとする。(2014年12月現在)

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(2012/02/25)
押切 蓮介

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SNKプレイモア

今回、訴えを起こしたのはSNKプレイモア(以下SNKPと記述)であるが、経緯としては『HG』のアニメ化にさいし、自社の著作物が他社の作品内に用いられていることを知り、SNKPはスクウェア・エニックス(以下、SEと記述)側に自社の著作物であるゲームの画像などを利用する場合は許諾を得るように申し出ていたという。しかし、SE側はこれを聞き入れず、無断利用したまま連載を継続。業を煮やしたSNKP側はSEを告訴し、SEは2014年8月5日、東京の出版社が警察によって家宅捜索を受けることとなった。

(参照: 人気漫画に他社のゲームキャラが…ドラクエの「スクエニ」を著作権侵害容疑で捜索 大阪府警



スクウェア・エニックス

これに対してSEは、2014年10月8日にSNKPに対し、漫画「HG」がSNKPの著作権を侵害していないことの確認を求めて大阪地裁に提訴した。2014年11月17日には、SEの社員役員の15人と作者の合わせて16人が書類送検されているが、出版社側は「著作権侵害にはあたらないと認識している」とし、作者は「出版社側が許諾を取ってくれていると認識していた」と容疑を否認している。2014年12月2日には、大阪地裁で民事訴訟の第一回口頭弁論が行われている。

(参照: スクエニ役員ら書類送検、他社キャラ無断使用疑い 否認の供述
(参照: 【ハイスコアガール裁判】著作権侵害の証拠、提出せず SNKプレイモア側「1000件の不法行為で時間かかる」



侵害と思われる箇所

今回の件に関しては著作権法における例外規定である公正利用の「引用」に含まれるとの見方もあるが、果たしてその主張がなされた場合に、それが妥当であるかを本稿では検証する。上述したようにSNKP側は第一回口頭弁論で「1000箇所以上の証拠提出があり時間がかかる」としている。これを引き延ばしの戦略と見ることもできるが、引用と出版の差し止めや損害を巡る裁判の場合に、検証される箇所は多いほうが良いことは「脱ゴーマニズム宣言事件」などを例にしても明らかである。

著作権侵害において出版の差し止めを求める場合は、1箇所でも侵害が認められれば、少なくとも問題の箇所が訂正されるまでは現行の出版物は流通ができなくなる。ゆえに、出版の差し止めや損害賠償を求めるSNKP側が検証される証拠の提出に慎重になるのは当然の姿勢といえる。とりあえずでもよいので、できるだけ多く証拠を出しておけば、その内の幾つかが侵害と認められ、勝訴できる可能性は上がる。

実際にSNKPのキャラクターやゲーム画面は、HGの作中に多く登場するが当時の時代背景を描くにあたり、登場が自然となる面は確かに認められる。ゆえに登場したすべてのシーンが著作権侵害にあたるとは筆者も考えない。おそらくほとんどは「引用」として認められるのではないかと考えている。しかし、中にはいくつか看過できそうにないシーンが存在するのも事実である。以下、それを筆者が独自に検証する。


① 『ハイスコアガール(著:押切蓮介)』 3巻97頁 2012年 スクウェア・エニックス ビッグガンガン / 『龍虎の拳』 1992年 SNKP
20141224 (6) 20141224 (1) 20141224 (2)
最後のモノローグにある”拳術をたしなむ奴が相手なら「覇王翔吼拳」を使わざるを得ない”という台詞であるが、旧SNK(現SNKP)のゲーム「龍虎の拳」では、”武器をもった奴が相手なら 「覇王翔吼拳」を使わざるを得ない”というものである。これはページ内で喧嘩している相手の女児キャラクターが武器などを持たずに素手で争っていることから、漫画の内容に合わせてゲーム内の台詞を改変したものと考えられる。

著作権法の例外規定となる公正利用における「引用」は、引用箇所を「改変することなく、そのまま用いること」が要件とされており、これを破ると公正な「引用」とみなされない恐れがある。細かい点ではあるが、これは重要なことである。引用するということは、「元の著作物である必要」がなければならないわけで、それを改変してしまうということは「引用する必要性がない」ということになってしまう。これにより上記のシーンでは、SE側の「引用」という主張は薄まってしまう。
”拳術をたしなむ奴が相手なら「覇王翔吼拳」を使わざるを得ない”については34話24項でも、改変したままの台詞が使われている。(おそらくコピペと思われる)


② 『ハイスコアガール(著:押切蓮介)』 3巻98頁 2012年 スクウェア・エニックス ビッグガンガン / 『龍虎の拳』 1992年 SNKP
20141224 (7) 20141224 (3) 20141224 (4) 20141224 (5)
2コマ目の”やめて!! お兄… 二人とも!!”の台詞であるが、これも上述と同じように場面に合わせて台詞が改変されている。ゲームでは”やめて!!お兄ちゃん ウン!私は何ともないの お兄ちゃん・・・ その人は・・・その人は、私たちの・・・ ”である。
(筆者が知らない別ルートのEDやイベントがあるかもしれないので、それらの台詞については保証しない)


③ 『ハイスコアガール(著:押切蓮介)』 3巻137頁5コマ目/166項3コマ目 2012年 スクウェア・エニックス ビッグガンガン
30137.png 30166.png
ゲームのキャラクター『ギース・ハワード』が、漫画の主人公キャラクターに対して、”「醤油」という 字を覚えたくば 「ギースに醤油」と 覚えるがいい!!”と言っているが、筆者の知る限り、ギース・ハワードというキャラクターがこの台詞を言うことはゲーム内では無かったように思われる。この場合には上述のような「改変」よりも、さらに強い意味で「改変」が加えられていると判断できる。既存のキャラクターのイメージを変えるような利用の仕方がNGとなったのは、コナミの『ときめきメモリアル・アダルトアニメ映画化事件』でも有名である。
ちなみに「ギースに醤油」とは、ゲームBGMのタイトルで、正しくは「ギースにしょうゆ」と平仮名である。


④『ハイスコアガール(著:押切蓮介)』 2巻48頁/49項 2012年 スクウェア・エニックス ビッグガンガン
20141224 (12) 20141224 (13)
これは48項の5コマ目に着目してもらいたいのだが、ゲーム画面が映っているが、会話中の二人は描写されるゲーム画面について前後のシーンを参照にしても言及していない。利用されているゲーム画面は完全に「挿絵」になってしまっている。これも「引用」においては由とされない利用形態で、言及する必要性がないのなら、引用する必要性も生じないため、引用に当たらないと判断される例である。こういった形態はおそらく他の箇所でもかなり多く見られるものと考える。



侵害にならないだろう箇所

次に侵害にならないだろう箇所についても触れておく。

⑤ 『ハイスコアガール(著:押切蓮介)』 2巻3頁/4項 2012年 スクウェア・エニックス ビッグガンガン
20141224 (10) 20141224 (11)
これらのページでは、年号や出来事とともに、ゲームのタイトル画面やメーカーのロゴが描写されている。これについては特に画面の改変なども見られず、比較的そのまま再現しており、さらに時代を紹介するにあたり、ゲームのタイトルを並べるのは理に適っているように思える。ただ、これも「挿絵」として判断されれば、「引用」とは認められない可能性も高い。

⑥ 『ゲームのプレイ画面』
画像の引用はもう必要ないように思うが、作中には実際にゲームのプレイ画面も登場する。これも時代を描写するのに必要であり、上述してきたように改変などが無い場合には「引用」として認めてもよいのではないかと考えている。ただ、これも前述(5)と同じように「単なる挿絵」と判断されてしまえば、侵害となってしまうことも充分に考えられる。

(5),(6)については、果たしてストーリー中に「実際のゲームタイトル」を出す必要があったのか? というところが争点になると考えられる。HG内のストーリーにおいて、主人公と少女の恋愛を描くことがメインであるならば、実際のゲームでなくとも、架空のゲームでもよかったはずである。しかし、HGが実際の過去のゲームタイトルを用いることで、独特の作風としていたことも間違いはない。読者もそれを求めていたことは言うまでもない。しかし、それが「引用」の妥当な線と認められるのかは、やはり疑問が残る。

(参照: 『ハイスコアガール』にSNKプレイモアがキビシイ理由
(参照: ディズニーで考える『ハイスコアガール』著作権問題続報

【追記】
SNKPがSNKから知的財産権を引き継いでいない可能性が指摘されていたが、『アルゼ裁判』でSNKPはSNKから知的財産の引継ぎを受けているとの判決が出ている。

SE側の過失を攻める論もあるが、これもSNKP側が再三の抗議を行っていたことから、過失は認められない可能性が高い。また、他の作品に対して許諾を取っており、警察の聴取に対しても「他の誰かが許諾をとっているものと考えていた」と発言していることから、暗に「許諾が必要な利用形態であった」ということをSE側が認めてしまっている。


新しい「引用」の判例と概念

現行法やこれまでの引用の要件から判断すると上記のように判断できると考えるのだが、最近では引用の用件について新しい見方も出てきているので、最後にそれを紹介して終わりたい。

「まとめサイト」は法的にグレーな存在? 弁護士が「著作権」の問題点をくわしく解説
上記の記事では、これまでの引用の要件に対して、別の判断が紹介されている。
 ・利用の目的
 ・利用の方法・態様
 ・利用される著作物の種類や性質
 ・著作権者に及ぼす影響の有無・程度

詳しくはURL先の記事に譲るが、こうして見るとHGの件もより緩やかに判断できそうな面を多様に含んでいる。



SNKPの刑事告訴は表現を萎縮させるか?

有識者らの団体から声明が出されているようだが、私個人としてはこれにあまり賛成できないでいる。理由は現行法では、著作権者が民事訴訟をとるか/刑事告訴をとるかは、権利者の意志にゆだねられており自由である。よって今回、SNKPが示談が不可能と思われた段階で、民事訴訟せずに、刑事告訴に至ってしまったのは急展開だったといえばそうだが、しかし、それでも民事か刑事かを権利者が選べる以上は、公正な権利行使であったと言わざるを得ない。

仮に、これが警察が権利者の意向を無視して強制捜査などを行ったのであれば、大いに問題とすべきところではあるが、実際にそういうところはない。現行法で権利者が民事/刑事を選べる以上は、それも尊重されて然るべきと考えるのが自然といえる。TPPなどによる非親告罪化への懸念を示す声もあるが、親告罪でなくなれば警察が強制捜査に乗り出すことは防げないので、親告罪である現状において懸念は不要だともいえる。

(参照:: 「ハイスコアガール」事件、知財専門家らが刑事手続きに反対声明 「侵害が明らかではなく、表現活動に委縮も」



©マルシー(著作権表示)は「許諾」の意味なのか?

本稿で特に論じる点ではないのだが、蛇足的に解説しておくと、(C)(R)といった表記は権利の主張を意味している。「(C)SNK」とつければ、「この作品の権利はSNKが所持している」という意味になる。これが実質「引用」における「出典表示」とされるかは怪しいところだ。また表示を行ったことによって「許諾」となることもない。

そもそも(C)表記の始まりは、アメリカなどの過去の著作権法で「(C)表記をしないと著作権保護の対象とならない」とされていた歴史に由来する。このように申請や表示によって権利保護の対象となる形式を「方式主義」という。しかし、現代の著作権法ではベルヌ条約加盟国において、「著作物は作成と同時に自然発生し、申請や表示義務もなく、保護の対象となる」という形式が取られている。これを「無方式主義」という。

さて、今の日本もベルヌ条約加盟国であるから「無方式主義」が取られており、著作権の発生に対して特に申請や表示の義務は生じない。ゆえに(C)マークも、表示の義務、その役割自体が消失しているということができる。実際に現代において(C)マークは慣行的な表示にすぎず、その意味を持たないことが大半である。例外的に商慣習として意味を持つのは、(C)表示によって、権利者が明確に示されることにある。今回のHGにおける巻末の協賛?表示もそういった意味合いが強いと思われる。

重要なのは、(C)xxx といった表記では、引用における「出典の明示」と認められるかどうかは不明だという点である。出展の明示は「作者、作品名、年号、企業名、引用掲載部分」などが具体的に示されることが求められる。どの程度まで示すかは程度によるところもあるが、「(C)xxx」だけで引用における出典の明示を果たしてとは判断されない可能性もある。

そして、そもそも(C)マークとは(現代においてその意味は失われているが)、態様としては「権利者が自らの著作物に対して、著作権を主張するために付けるもの」という認識であり、「第三者が他人の著作物に勝手につけるマークではない」ということが指摘できる。つまり(C)マークを他者が付けるということの合理的な理由は存在しない。

それでも先述したように商慣習として出版物などで出典を示すにあたり、「(C)xxx」とメーカー名だけを示す例はあちこちで目にすることができる。しかし、それに法的な根拠がないと本稿では、筆者の認識として述べておく。引用に当たって、出典の表示はできるだけ具体的に示すことを推奨する。それができていれば(C)マークなどは不要である。



【2015.08.07 追記】
中国37GamesがSNKプレイモアの買収を発表。KOF、『餓狼伝説』、『メタルスラッグ』などIPの活用を目指す



【2015.08.28 追記】
ハイスコアガール裁判は和解へ

和解による紛争の解決に関するお知らせ (スクエアエニックス)



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